ショートストーリー

三毛4

夕方に三毛とすれ違ったので、今日はお出かけですかと伺えば、わたし招かれるとこが一杯あってねと仰るので、そのよそ行きの姿を写真に撮らせてと願えば、良きに!との返事でしたので、ぐっと近付きiPhoneを構えると、アップは駄目と猫パンチを喰らい、凛と…

三毛のお話3

あのね、どうして君はいつもここにいるの、と隣の三毛に聞けば、夜も遅いんだから酔っ払いは早く帰りなさいと諭され、それは失礼しましたと、踵を返しまたバス停に戻ろうとするが、ふと自分ん家であることに思い起こし、話は逆じゃんと言えば、気が戻って良…

三毛のお話2

あのね、君は、輝く夜、と言う話を知っているのかい、と深夜我が家の庭で出くわした、隣ん家の三毛に聞けば、それがどうニャンと仰るので、あのね、迷い猫を大事に飼っていたら幸せが来たんだよ、と返せば、んじゃー大事にせいよと仰ったので、土産の蒲鉾を…

三毛のお話1

今日も隣の三毛が、私ん家の駐車場で、ゆるり体を冷やしており、おやおやお帰りの遅い事でなんて言うものですから、あなたもこの時間まで夕涼みなんて良き身分でございますねと申し上げれば、頼まれもせず怪盗より守りながらも摘みの一つも無いのは不思議じ…

指輪3     作:西戸 崎(Saito Misaki)

ある朝、男が食卓に着くと、テーブルには朝刊と、その上に指輪が置いてあった。 男は、一瞬顔が青ざめた。この指輪は、男が陰で付き合っているA子の誕生祝いであげたものだった。 この動揺を気取られてはならないと、男は平静をつくろい、「どうしたこの指輪…

指輪2     作:西戸 崎(Saito Misaki)

朝、丸ノ内線池袋行きは、通勤時間帯とはいえ逆方向でもあり、立っている人も少なく、ゆったりと男は座っていた。 熱心に本を読んでいたが、目の疲れも眠気もあり、本を閉じて大きく背伸びをした。 ちょうどその時、前の席に座っている若い女性に目が行った…

指輪     作:西戸 崎(Saito Misaki)

旅の途中。 斜め前に座る男。 ちょうど自分と同じ年頃だろうか。髪には白いものが多く混じっている。 緑が映えて美しい山間の、流れゆく景色を、じっと眺めいる後ろ姿に疲労が漂う。 まるで、鏡に映る自分の後ろ姿を見ているようでもある。同輩よ、と声を掛…