26.辞典の役目

最近はめっきり本としての辞典を引くことがないですね。私の場合、分からない言葉が出てきた時、その殆どはカタカナ語やアルファベットの略語ですが、本としての辞典には出てなくて、ネットの用語辞典で引くことにしています。
今日のお話は、分からない言葉を引くための辞典の役目ではなくて、発想を広げるための辞典の役割です。


ー反語辞典
反語の辞典の種類は多くはありませんが、私の使っているのは新星出版社の反対語辞典、相当に古いものです。反対語は、ある言葉の対照にある言葉、反対の意味を持つ言葉です。
引き方は、簡単で目的の言葉で引けば、その反対の意味を持つ言葉が複数並べられています。
一般的な使い方は、恐らく文章中の言葉を否定したり肯定する場合に、反対語の肯定や否定で論理を構成するためには使うのでしょう。また言葉とは面白いもので、反対語も複数ある場合に遠い領域の反対語は対象の言葉に近くなる場合もあります。
しかし、発想のために使う反対語辞典は、オズボーンのチェックリストのように、あるものの反対にはどんなことがあるのだろう、と強制させるものです。
ある言葉を軸に発想を広げようとする場合に、普通の国語辞典で、その言葉の似た言葉を拾い上げます。そして次に、反対語辞典で、それぞれの反対語を書き連ね、その反対から創出される新しい発想やイメージを集めていくのです。


類義語辞典
私が使っているのは、角川書店の角川類語新辞典というものです。これも相当に古いものです。
先の反対語辞典の使い方にも登場した、似た言葉を引くための辞典です。もちろんいわゆる国語辞典、私の場合は岩波書店広辞苑ですが、でも類語は登場しますが、独立した類語辞典には語彙はかないません。
類語辞典は、その言葉通りに類似の言葉を集めたものです。一般的な使われ方としては、文章中に同じ言葉を重ねたくないという時に、類語で表現します。
しかし、発想の分野では、似た言葉のさらに延長線上の言葉を探したり、別の使い方ではキーワードでその言葉の概念を規定する場合に用います。
例えば、コンピューターは日本語訳では電子計算機で、コンピューターと電子計算機は同列の言葉になります。しかし、電子計算機は、機械式の計算機や電気式の計算機をまとめた計算にという言葉の下に位置付けられます。このような関係も類義語辞典では表されます。このような言葉の整理辞典をシソーラス(分類語彙辞典)と言っています。
例えば、自分で整理した資料を、検索する場合のことを考えて長いファイル名を付けることを示しましたが、このファイル名、いわばキーワードはできる限りの上位の概念の言葉をつけておけばヒットしやすくなります。
例えば、ある時はコンピューターとキーワードをつけて、気分が違う場合に電子計算機とつけて仕舞えば、永遠に片方の資料は出てこなくなります。


ー逆引き辞典
私が使っているのは、岩波書店の逆引き広辞苑というものです。この辞典をどの様に使うのかを説明するのはちょっと難しいかも知れません。言葉の韻を踏んだり音を踏んだりする、いわば言葉のリズムやイメージを広げる時に使います。辞典を引く事例で説明してみましょう。
私はよく言葉の海に遊ぶ、という言葉を使いますが、海という言葉を使って逆引きをしてみましょう。逆引きですから、み、そして上にうが付く言葉を引きます。すると、海、に始まり、膿、近江、淡海、大海、、、中海、、、湖、、、袖の海、筆の海、外の海、言葉の海、火の海、霞の海、天の海などと列挙されます。これらの言葉を眺めながら、新たなイメージを取得するのです。


ーことわざ辞典
私が使っているのは、旺文社の成語林というもので、故事ことわざ慣用句などを調べる時に使います。日頃何気なく使っていることわざも、調べてみれば逆の意味だったりすることがよくあります。そのチェックのために使うのはもちろんですが、ことわざそのものをどう見つけるのか、辞典はその解も用意しています。
先の例にならって、海という言葉を含んだことわざを引いてみますと、生き死にの海、貝殻で海を測る、貝殻で海を干す、に始まり、約28のことわざや慣用句が出てきます。これらの一つ一つに当たり、発想の広がりを求めたり、まとめの言葉とするのです。