故郷への思い 作:西戸 崎(Saito Misaki)

金の卵と囃されて 粋も旨かも分からぬうちに 故郷を出で
齢い重ねて 今は悲しい分かれに帰るばかり
一日延ばして 巡ってみたが
藤棚の下で缶蹴りして 過ごした千代妙見神社
既に朽ち果て 驚くばかりの狭い空地
あの全てが広い 晴れ晴れとした 景色に溶け込みたい。


瞼の景色はないものの 博多言葉に触れてみれば
ホッとする気持ちが 愛おしく 我が血の熱さが甦る
大濠の中道にたたずめば 吹きぬける風に 子供の声が混じる
ふと涙がこぼれ 嗚咽に変わる
悲しいことなど無いのだが 涙溢れて止まらない
これまでの想い これからへの想い 
この熱い涙を忘れまい。


思いが強いと 囚われる 思いが弱いと 消えてしまう
西公園から見える入船出船 志賀島へ通い船が白波を切っていく
毎日通った思い出が甦り また郷愁に囚われて瞼が熱くなる
この想いは何処から来て 何処へ行くのか
きっと心の中に 何かがあるんだろうな 今は分からないが
これまでの想い これからへの想い
見つめなおすには時間がないが 熱い気持ちは忘れまい。

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