詩歌

新入社員に贈る歌《螺旋階段》2016年     作:西戸 崎(Saito Misaki)

1. ネジって知ってるかい 身の周りに幾つも使われてるあのネジのこと 一回しのピッチは小さいけれど 物と物をキュキュって合わせていく閉じていく 僕らの時計は毎日24回も回るけど 一年のピッチはあと50回も回れば社会人はもうお終いなんだ 早いのかはたまた…

贈り物

お元気ですか。 歌の詰合せを贈ります。 楽しい時も悲しい時もあなたの励みになりますように。 季節折々の鳥があなたの声を伝えてくれるでしょう。 歌の詰合せ贈ります。 どうかお元気で。 お元気ですか。 夢の詰め合わせを贈ります。 どうぞお好きな夢を選…

新入社員に贈る歌  新しい景色   作:西戸 崎(Saito Misaki)

梅が香り 桜が咲く季節まで 君と僕は 互いに向かい合い 選び選ばれる間柄だった 真剣だったね 大変だったね 記念すべき春なのに いったい自分の未来はどうなるんだろうと 思っただろう ようやく春が訪れて満開の花が咲く いまからここから 肩を並べて 共に前…

占師 西戸 崎(Saito_Misaki)

ふとしたことで 君と酒を酌み交わした 僕の手を見て 私は占えるの 人の未来が と言った どうなの僕の未来は と尋ねたら 君の顔が苦笑いしたね そして内緒と言った 僕たちは長く暮らしているけど 君は幸せだったんだろうか いまも答はくれない 苦笑いの謎のま…

里をめぐる 西戸 崎(Saito_Misaki)

鈍行電車を降り 佇めばそこはもう山里 木漏れ日を浴びて 目をつむれば 忘れていたあの日の歌が甦る 抱きしめた隙間から 君はすっと逃れた もっと追えばよかったのか いつか来た道 戻り道 風に舞う葉が 心模様。 いつか来た道 しっかりと手を繋いで 赤い屋根…

再会 西戸 崎(Saito_Misaki)

安心したよ 元気そうで ずっと想ってたんだ 君のこと 目の前に広がる大きな夢が 僕らの道を違えたけれど 充ち満ちた笑顔に 時は消え 握手した手が 大人になってた 忘れてなかったよ 君の顔 笑うと頬のえくぼが 蘇るね セピアに朽ちた卒業写真 彼の人の面影た…

ありのままに     作:西戸 崎(Saito Misaki)

誰かが言ったな 頭がよければ 知にまける 口が立てば 弁に負ける 文に秀でりゃ 論に負ける 立派な文句じゃないか 俺が言ったんだっけ そんなはずは無いなでも 人生そんなもんさ 気取ることはないさ ありのままに 率直に 生きていけばいいんだ。 誰かが言った…

幕が上がる     作:西戸 崎(Saito Misaki)

何度 挫けただろう 何度 唇を咬んだろう。 仕切りを巡って 罵り合ったこともある。 待ち望んだ お前の創った ステージが いま始まる。 緊張に包まれていた 蒼い手が キューを振る。 スルスルと幕が上がり 大きな拍手が 袖に響き渡る。 お前の頬に 漸くの赤み…

おめでとう そしてありがとう(新入社員に贈る歌) 西戸 崎(Saito_Misaki)

おめでとう そしてありがとう 苦しみもあるだろう 楽しみもあるだろう 手を携えれば きっとうまくいくよ 君達はやっと サナギになったばかり 飛び立つのは まだまだ 昔の君達の影は 消えてしまった 3年後の自分を イメージして 夢羽ばたく その君達に アイタ…

フライ・フライ・フライ     作:西戸 崎(Saito Misaki)

さあ 助走はついた 蹴りだせ 大空に飛び出せ 飛べるかって もう飛んでいるじゃないか 頼りない操縦で グラグラしてるけど さあ 背負った荷物はすてろ 昨日までの過去は 遠い景色 目の眩む地上を見ろ 大地が吼えて 絶望と涙の中から 立ち上がる人がいる 翔 彰…

鎮魂の歌     作:西戸 崎(Saito Misaki)

轟々という大地の揺れに続く大津波が 昨日までの団らんを 形もなく押し流し きょうからは 街の人と共に暮らす 家族を探し 魂は抜けがらとなって 身体横たえる 愛する人は 何処に 信じる人は 何処に 声を枯らし 歩きまわり 探し回る うねりの中に苦しさと恐怖…

猫のミーシャ     作:西戸 崎(Saito Misaki)

冷たい風が 頬を凍らせ 目が滲む 水晶橋に佇むと 川面に映るネオンの光 怒涛のような 仕事と共に過ぎ去る きょうの終わり 締めくくる 溜め息が 輝く夜に 昇ってゆく 大きな声で ありがとうと 月に叫べば 足元で 小さな猫が応える 眼脂に 覆われた 小さな目の…

窓に描かれる月     作:西戸 崎(Saito Misaki)

田園地帯を走る 京成成田空港行き 窓の外には 暗闇に点々と 淡く光る 街路灯 きょうの疲れに まどろみながら ふと見上げた窓の外に 大きな満月が どんなに走っても 一緒についてくる まるで絵のように 窓ガラスに張り付いて 僅かな酒と言葉に 打ちのめされて…

旅にでよう     作:西戸 崎(Saito Misaki)

さあ 旅にでよう 一人ぽっちで 故郷を離れよう 後ろ髪など ひかれるもんか 見送りなんか いるもんか 過去は飛び去り 遥かかなた 流れる景色が 未来へ向かう 見知らぬ街に 胸はときめき 星はきらめく 街はざわめく 俺を迎えて 月が吠える 一人酒は 旅立ちへの…

母への想い     作:西戸 崎(Saito Misaki)

苦労を掛けて ごめんね これからだねと 言ったばかりなのに 小さな庭も作って 綺麗だねと 微笑んでいたのに あなたが 今際の時に 震える指で書いた ありがとうの文字を 私は忘れられない いまでも 想い出せば 悔しくて いまの私は まだ 小さな幸せも 守るこ…

西へ帰ろう    作:西戸 崎(Saito Misaki)

足早にやってきた 秋が 夏の想いを 洗い流すように 涼やかな風が 青空を従えている 墓標の前に祈れば 白い雲が 流れていく 西へと西へと 道しるべ そろそろ 帰っておいでよ 赤子の様な 気持ちになって 帰り道は 分かるだろ そろそろ 帰ろう 赤子の様な 気持…

怒涛     作:西戸 崎(Saito Misaki)

雨よ降れ 風よ吹け 怒涛の嵐よ 我が心の澱を 拭い去れ さ迷える 足取りを 大地に 踏み縛れ いまを 凌げば 灼熱の日が 志を照らす 甦れば 道を拓け 突き進め 雨よ降れ 風よ吹け 魂が 震えるまで。 雨よ降れ 風よ吹け 天から降りる 火柱よ わが身を貫け 半端な…

私の中の確かなもの     作:西戸 崎(Saito Misaki)

お帰りなさい 私の心 気恥ずかしいけれど ただいま 何処に行ってたのか 知らん振りしてくれて ありがとう 私の心が揺れ続けて 信じる心が迷い続けて 確かな自分を 確かな気持ちを 探し続けた 長い時間 お帰りなさい 私の心 気恥ずかしいけれど ただいま よう…

心の襞     作:西戸 崎(Saito Misaki)

(この作品は“吉田修一”さんの小説“パレード”をモチーフに創作したものです) ぎらぎら照りつける 太陽 この部屋に入ると 熱を失った 紅い気球 一緒に暮らす 僕ら つい先ほど前は 見も知らぬ 行き交う人 束縛もなく 詮索もなく 自由だ だが青春という 実感は…

カウンターパンチ(小説”ボックス”のテーマ)作:西戸 崎(Saito Misaki)

初めて訪れた時は 暗く 汗に蒸せるジム。 黙々と励む部員の中に ヘラヘラとした あなたがいた。 スパーリングのブザーが鳴ると 豹の目に変わる あなたがいた。 カウンターなど 嫌いだと ファイトを挑んだ。 そんなあなたが 羨ましかった そして憧れた。 わた…

拳     (万年東一のテーマ)作:西戸 崎(Saito Misaki)

たった一夜の 出会いだけれど 俺のために 命を捨てた異国の女。 守ることも出来ず 不甲斐なさに泣いた。 粋がっていても 拳だけでは 守れないものがある。 愚連隊 俺達にも 誇りはある。 確かに 喧嘩は好きだったぜ。 筋はネェから 中途半端だけれど。 出入…

悠久の大地に帰ろう(”珍妃の井戸”のテーマ)  作:西戸 崎(Saito Misaki)

静かに 静かに 胡弓の音が 朽ちた街路を彷徨う。 戦乱の血は 砂塵に混じり 紫禁の空を 赤黒く染める。 虚城の中は、広大な言葉の嘘と真の織物。 私達が何かしたの 私達の国が あなたを穢したの。 なぜに なぜに貶められるだけなの。 だが心は穢せまい 民草の…

舫い綱(もやいづな)     作:西戸 崎(Saito Misaki)

勇気を振り絞り 船を漕ぎ出す 暗い海に。 星を頼りに 櫂を握る。 いつか日が昇る いつか昇る日を 探しに。 風に揺れ 波にもまれ 大海に彷徨う。 心の頼りは 舫い綱。 いつか辿れば戻れる いつか戻れと辿られる。 日よ昇れ 我が身を照らせ 命尽きる前に。 日…

旅立ち     作:西戸 崎(Saito Misaki)

春の うららかな日。 それぞれに 巡り会えた 旅立ちの日。 瞳は燃え 頬は桜色に 染まっていた。 レールは ここで途絶えている。 きみ達の 新しい道は その手で切り開き 足で踏み固めよう。 自分探しなんて その汗が 笑うぜ。 昨日は 遥か昔 遠き彼方 忘れ去…

No.50 蘇えれ     作:西戸 崎(Saito Misaki)

なんだか 自分の気持ちが 納まらず ガレージから引き出し 磨き始めた サビだらけのマシン。 赤茶けた オイルが おまえの涙。 可哀想に ボロボロに朽ち果てて。 惚れ込んで 飽きたら 捨て置くなんて。 中途半端な 俺が ここにもいた。 キックを踏めば 蘇える …

湖岸の野辺の花     作:西戸 崎(Saito Misaki)

知っているかい 湖の向こうまで 歩いていけるんだよ。 いつでも会えるんだ その気になれば。 けれど 遠くへ旅立ち 会えないと思っているんだよね。 湖岸に咲く 雪に埋もれる 福寿草。 おまえは 凛々しく いつも向こう岸を 見て咲いている。 行く人も 来る人…

幕が上がる     作:西戸 崎(Saito Misaki)

何度 挫けただろう 何度 唇を咬んだろう。 仕切りを巡って 罵り合ったこともある。 待ち望んだ お前の創った ステージが いま始まる。 緊張に包まれていた 蒼い手が キューを振る。 スルスルと幕が上がり 大きな拍手が 袖に響き渡る。 お前の頬に 漸くの赤み…

ポケット     作:西戸 崎(Saito Misaki)

氷雨が 降る日。 古いジャンパーを着て 街に出た。 ポケットを まさぐると 古いテレフォンカード。 思い出が 甦る。 あいつとの デートの約束に よく使った。 何度電話しただろう 空振りの。 心は変わり 街は変わった。 何処で 寒さを 凌いでいるのだろうか…

きみの笑顔     作:西戸 崎(Saito Misaki)

何十年ぶりに パーティで会った。 懐かしかった。 きみは 眩しかったよ。 力みなぎり 自信にあふれていた。 俺は そんな友に 誇りを持っていた。 学生時代も つるんで遊んだものだが 再会してからは よく飲んだものだ。 互いに彼女を連れて 踊りにも行った。…