Best 73&88   作:西戸 崎(Saito Misaki)

まだ髭も生えない 少年の頃だったね
僕達は 毎日小さな船に乗って 通ったね
博多湾でも荒れるときは 皆船底でうずくまったっけね
僕等の夢は 船に乗って 世界を巡ること その最初の試練だったね
吹雪の日 桟橋で並んで 帰りの船を待つ時間の長かったこと いい思い出だね
いまあの夢は 世界の何処を巡っているのだろう
Best 73&88。


幼い写真の免許証 僕はまだ大事に持っているよ
君とは 毎日運動場の先の海で 遊んだね
朝 海が荒れたら その日は休みで 天神に繰り出したっけね
僕等の夢は 船に乗って 世界を巡ること 遊びの仕方も知らなくちゃ
暑い夏の日 切っ先が波をはじき 飛沫を浴びて ずぶ濡れになったっけ
いまあの日の夢は 僕等の手にあるよね きっと
Best 73&88。


いまでも ときどきレシーバーで 信号を探すよ
君の 打ったモールスが 世界を巡っていないかってね
宇宙を駆け巡って 帰ってきた50年前の 信号が聞こえるかもしれないと
僕等の夢は 船に乗って世界を巡ること いまはもう別々の道
春の穏やかな日 桜の下で 再会を誓って 長い長い道を歩み始めたね
あの日の夢は いま君とあえて 人生(生きた)という果実で結ばれたね
Best 73&88。


(注:Best 73&88とはアマチュア無線コードで、さよなら、また会いましょう。の意味です)
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