おとんのお腹 おかんのお腹     作:西戸 崎(Saito Misaki)

旅先の宿での風呂上り 我が身体 鏡に映る
胸の肉は落ち ただお腹だけが 威厳を見せる
長い年月 互いに戦ってきた 同胞よ
俺の気はまだ張っているが 姿形は 歳相応か

おとんを亡くして はるかに時間は過ぎたが
いまの俺が おとんに勝るのは まだこのふっくら腹だけかも知れないな
それとも 苦労から開放されて おとんのお腹はこれ以上か
難儀をかけたな 親父殿 もっと穏やかに話をしたかったな 親父殿



休暇の我家の朝風呂で 明るい日差しに照らされて
気持ち晴れ晴れ 足を伸ばすとき その細さが頼りない
長い年月 互いに支えあってきた 同胞よ
よくもまあ 無駄に重い身体を ひたすら運んでくれたな

おかんを亡くして はるかに時間は過ぎたが
いまの俺が おかんに勝るのは このふっくらお腹と細い足かな
苦労かけての連続で 朝風呂味合わせることもなく おかんの好物すら思い出せない
許してください お母さん もっとゆっくり話を聞いてあげたかったね お母さん


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