いっぺん     作:西戸 崎(Saito Misaki)

ふと旅に出てしまった あのとき
一遍だけでも あなたに会っておけばよかった
いまも その切なさを引き摺り 虚しい旅を続けている
電話の声は 無情にも 心つなぐ拠り所 見出せず
さよなら と言えただけ
いまも その声が呪縛となって 引き返せない
ふと旅に出てしまった あのとき
一遍だけでも あなたに会っておけばよかった


遠くまで来てしまった 旅の途上
一片の 恋のかけらを踏んでしまった
深い楔(くさび)が打てぬまま 遠くのあなたが邪魔をする
手紙を書こうと ペンを持つが 想いのみが募るだけ
会いたい との声は届かない
もう ここを 終焉の地と定めようか
遠くまで来てしまった 旅の途上
一片の 恋のかけらを踏んでしまった。


思い出を忘れられず 立ち戻ってきた
一変していた あなたを見てしまった
山のように積まれた 心の手紙が 風に飛ばされていく
風よ吹け 強く吹け 心の塵を空っぽにしておくれ
強がりを言って きびすを返す
思い出を忘れられず 立ち戻ってきた
一変していた あなたを見てしまった。


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