舫い綱(もやいづな)     作:西戸 崎(Saito Misaki)


勇気を振り絞り 船を漕ぎ出す 暗い海に。
星を頼りに 櫂を握る。
いつか日が昇る いつか昇る日を 探しに。


風に揺れ 波にもまれ 大海に彷徨う。
心の頼りは 舫い綱。
いつか辿れば戻れる いつか戻れと辿られる。

 
日よ昇れ 我が身を照らせ 命尽きる前に。
日よ昇れ 今何処にいるかを 教えたまえ。 




手のまめは潰れ 血は噴出し 櫂を染める。
闇よ帳を開け 雲よ去れ。
いつか日が昇る いつか昇る日を 信じて。


幾度 舫い綱を確かめ 気を奮い立たせたろう。
心の頼りは 繋がる先。
愛する人と結ばれ 我が想い出に繋がっている。


日よ昇れ 我が心を照らせ 憤死する前に。
日よ昇れ 舫い綱の先に 明かりを届けるために。




疲れ果て 舫い綱を身に巻き ボロのように眠る。
波のうねりが 綱を引く。
遠き浜に待つ 輩(ともがら)が檄を送るように。


目を覚ませ 目を覚ませ 絶望から覚めよ。
耳を澄まし 愛の声を聞け。
待ち人の 焦がれた涙を知れ 孤独ではない。


見よ日が昇り 一条の光が 行き道をしるして。
見よ日が昇り 舫いを赤く染め 絆を証している。


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21時40分現在。帰宅。
14時過ぎに家を出て、連れ合いと映画を見てきた。”獄に咲く花”という吉田松陰の”野山獄”中の淡い純愛の映画だ。今回、泣くまいと心に決めていたが、上演の前から下地を作られていた。ピアノで奏でられる素晴らしい音楽に感動した。
何度か涙腺が緩み、グッと堪えていたが、ススーッと頬に伝わり薄いしょっぱさを味わった。
海に向かって愛の言葉を捧げる場面では、別の思いもこみ上げ、ハンカチを使わざるを得なかった。通路を挟んだ隣のご婦人は、すすり泣いていた。
エンドロールで我が家族達の名前が出てきた時は、とても幸せな気持ちに包まれた。
今度、この映画音楽を購入しよう。とても気に入ってしまった。


獄に咲く花”を見て、何だか、昨夜、きょうと彷徨っていた心が、とても恥ずかしいものに思えている。いまは、清々しい気持ちが訪れている。


有楽町駅前のスバル座を出て、暫くは目が赤かったが、冷たい空気に触れて治まったようだ。
夕食をとりに、1丁目の銀座アスターに行った。値段はいつもの上海と1桁違う高級さであったが、味も良く満足して帰ってきた。