自転車の旅

TVで火野正平さんの自転車の旅を見ている。今日は、郡山周辺を訪れている。
自転車は好きだな。もう乗らなくなって30年以上たつけれど、数年間旅を続けたことがあった。もちろん会社勤めをしていたので、主に夏休みの一週間とか土日を使っての旅だった。
いつも一人行が好きで、目的地だけを決めてのぶらりの出発だ。
自分には好きな方面があって、東や北には行ったことがない。全ては西に向かう旅だった。
一番の長距離は和歌山県の新宮から京都まで。
新宮までは東京から深夜列車で輪行。確か大垣行きだったかな。東京から通勤圏までの間は酔客で一杯だったな。席には座れたが、とても寝ることはできなかった。
早朝、名古屋で乗り換えて新宮へ向かった。
新宮駅からはダラダラとした上り坂の連続で、夏の強い日差しを受けながら大汗をかいてペダルを踏んだ。とにかく登る一方なんだ。
睡眠不足の身には辛いことだったが、当時の若さでは無理も効いたんだね。
熊野川に沿って延々と登り続け、途中の熊野本宮では、大汗を吹き飛ばす心地よい昼寝をしたことを覚えている。一人行のいいところは、気を使うこともなく勝手気ままに行動できるところにある。今もって、一匹狼のような性格は変わっていないね。とにかく話すことが好きじゃないんだ。
大台ケ原にも寄ってみたい気持ちがあったが、何だか幽谷霊山のような気もして、恐怖が興味に先立った。
十津川郷温泉で夕暮れを迎え、湖畔の小さな温泉宿に飛び込んだ。風情のある宿ではなかったが、部屋から見る湖がとても綺麗で何ものにも代えられない宝物をみた。柄にもなくスケッチをした。
翌日には五條に向かい、やはり上り坂。
雄壮な川との連れ合い旅に途中で別れ、ひたすら漕ぐ。自転車の良いところは、一心不乱に漕ぐことに集中し何も考えないで済むことだね。上り坂は特にそうだ。自分が粘り強いのは、と思うのだが、キツイ坂を登ることが好きになった自転車のせいだろう。
五條の手前の天辻峠は、これまでの上り坂を一気に下る急なものだったが、クネクネ曲がり、道幅も狭くて豪快なダウンヒルとはいかなかった。
五條ではホッとする間もなく、吉野山に向かう。これもきつい山登りだったね。途中押してしまった。自転車乗りは、どんなにきつくても押してはならないプライドがある。もうクタクタだったんだろうね。
国民宿舎に飛び込んで投宿した。朝には霞がかかり深い緑の大きな谷あいが美しかった。もう一度行きたいと今も思う。
翌日は明日香を巡りながら、夜には京都に入った。
顔や手は真っ黒に焼け、太腿は一層太くなっていた。



続く。。。