22.著者の日と編集者の日

ものを書く作業は孤独なものです。行き詰まるとすぐに投げ出したくなります。投げ出しても状況に変化がない身であれば、人は易きに流れる、の例え通り遊びに行ってしまうでしょう。
しかし、1行でも書く、1字でも書く、と決めておけば楽です。何しろ原稿用紙やタブレットに1分で良いから面と向かう習慣をつければいいだけ、とスタートしてみましょう。
そして今日は著者の日、少し内容が溜まれば、或いはちょっと疲れていれば、今日は編集者の日と決めて、原稿用紙やタブレットに向かってみましょう。
いやいや、敵と味方に別れて考えてみようというのではありません。頭を切り替えて、違う視点でブラッシュアップしようという考えです。
著者も編集者も、こと出版するという目標が決まったところからは、互いに良い本づくりをしていくパートナーなのです。


ー著者の日
今日が著者の日であれば、一心不乱に言葉やキーワードを書き連ねていきましょう。文章でなくて良いのです。流れなんて気にすることはありません。思いつくままひたすらです。
流れも関係ありません。大局でも、枝葉末節でも構いません。前後も上下も関係ありません。文字でも図形でもいいのです。
言葉やアイデアを書き連ねてください。時間はせいぜい30分から1時間。疲れたらその日はお終いにしましょう。


ー編集者の日
著者の日が数日続いたら、時々編集者の日にいたしましょう。
編集者ですから、書き連ねた内容をざっと見渡して、似た者同士を寄せたり、面白い切り口や言葉があれば赤で囲ったり、意味が不明なところには?マークをつけたり、理屈が飛躍してたら何故、どうして、とコメントしたりしましょう。
また、編集者の日は、調べ物の日でもあります。原稿の幅を広げるために、関連する事項に何があってどういう意味かを調べ、資料として付けておきます。
編集者の日は、最初のうちは頻度少なくて構いません。また大筋の方向がブレないように大局から見極めていきます。細かいことは終盤に入ってからの指摘となります。


ー主導権が入れ替わる日
原稿が進み、素材もほぼ出尽くしてくる頃、それまで著者の主導だった関係が、編集者主導に変わります。
分かり易さや、展開のテンポ、言葉の強弱、図表化等視野を広くして編集者は赤入れし原稿の質を高めていくのです。
著者は、そうだねー、そうだねーと言いながら、編集者に従い追加修正を行っていきましょう。


ー楽しみながら作業する方法を求めて
以上のように長丁場、孤独を楽しみながら立ち向かわなければなりません。私は、結構易きに流れる質なので、楽しみ事にどう変えるかを考えながら進めています。
これまで私は新書を出した事はありませんが、およそ原稿用紙200枚ほどの分量があれば新書になるのではないかと思っています。200枚に更に図表や写真が加わっての事ですが。
知の小道具で言えば、項目数40程で新書にはなるでしょう。
なぜこのような計算をするかといえば、ゴールを目指さなければ、ゴールに到着しないからです。あと何枚という目安が励みになるのです。本を例にとれば、何ページ書いても満足できるものが出来上がるわけではありません。いつか何処かで切り上げなければならないのです。本には、およそ最低のページ数があるでしょうから、そこが一応のゴールとなります。
編集者は、著者を騙し騙し、ゴールへと導いて行くのが大きな役割でもあります。著者はゴール寸前には、もうどこを絞っても一文字も生まれない、というヘトヘト状態にあります。並走してゴールテープを切るのです。売れる売れないは二の次です。