16. Aチーム

音楽の教職課程に通っているKさんに、バンドの趣旨、5名編成でパソコンのキーボードを手弾きする旨を伝えた。Kさんは目を輝かせ、早速同じ大学の同級生や下級生に声をかけてくれた。原則は、皆ピアノが弾けることだったが、Kさんの大学の仲間は、皆ピアノが弾けたのだ。メンバーはすぐに集まった。それも個々人にはイベントのスケジュールが合わなかったり、病欠したりする子もいるだろうからとバックアップのメンバーも用意してくれた。
集まった娘達は、大学でもそれぞれにバンドをしているらしく、こちらが何も言わなくても、それなりにどんなスタイルのバンドにするか決められていった。
企画は立てたものの、バンドなどの経験は僅かしかない吉田は、リーダとしてKさんを立て全て任せることにした。
メンバーが揃ったとは言え、パソコンのソフトはまだ影も形もない。社員で開発メンバーとして手を上げてくれたSEのH君は、クラッシックギターを習っているとのことで音楽には造詣が深かった。どんな音が出れば良いのか、手弾きするにはどんなキー配列であれば良いのかなど、多くの課題をバンドメンバーとH君は煮詰めてくれた。ソフト開発が進む中、kさんはバンドメンバーの娘達と、5曲ほどの演奏曲目を決め担当別に譜面を起こし、模擬練習を行い始めた。
ソフト開発は難航し、完成したのはイベントまであと1ヶ月と迫っていた。彼女達にも授業やバイトなどの予定があり、集まれるのは5時以降と圧倒的に時間が制約されていた。そこでパソコンをメンバーに配布して自宅で個人練習を行ってもらい、週末に会社に泊まり込んで集合練習をすることになった。泊まり込みとは言え、全く寝ないわけにはいかないので、会社近くのビジネスホテルを予約して、毎深夜寝に行くという猛烈練習に入った。
少なくとも、皆がピアノが弾ける娘達であり、覚えは早かった。見る見るうちに上達していった。ちょっと目を話している隙に、コーラスや振り付けが付いていたりする。さすがに自分たちでバンドを組んでいるだけのことはあるのだ。