吉田は小さな頃から音楽が好きだった。小学校低学年の頃には、声が良いと認められ、先生の勧めがありラジオ番組で童謡を歌ったことがある。
大学では、無線クラブであったが、クラブの友人達とはよくギターを弾いてフォークソングを歌っていた。
そんな音楽好きの延長で、パソコンを使ったイベントの企画として音楽に関することができればと考えた。また当時より、パソコンで音楽を自動演奏することは流行りであった。吉田は、ギターを弾いてフォークを歌ってもいたので、ライブでの演奏の高揚感はよく分かっていた。演奏する側も聞く側も、ライブであればこその高揚感は、一度味わえばはまり込んでしまうのだ。
パソコンで自動演奏するのではなく、バンドメンバーがパソコンのキーボードを鍵盤に見立てて手弾きする、そうして一応のバンドとしての構成は、メロディー、ベース、コード、リズム、その他の擬音と言う女性5人編成のバンドだ。
吉田の頭の中には、次々と妄想が拡がっていった。キーボードを弾きながらコーラスし、衣装はミニスカートで、振り付けもある。次の課題は、この内容をプレゼンする企画書だ。先生に面白さを感じさせ、主催者のゴーサインをもらわなければならない。
