17.インタビュー、聞き方の技術、質問の技術

私は若い頃に、それこそPC勃興の頃にPCトップメーカーの販促誌として、PCの活用事例集の作成を手掛けていた頃がある。部員が少なかったので、というかいなかったので私一人で企画し、取材依頼し、全国に飛んで取材し、原稿にしていた。私にはレイアウトなどのデザイナー的力は無いんだ。
それまでにPC解説の単行本を何冊も出しており、受注はスンナリ決まっていた。
また私自身、当時PCを知的生産に役立てる実践研究をしていたので、それまでメーカーがうたい文句にしていた一般的な使い方ではない特殊な記事にすることを企画の中心とした。
それ以降、インタビューはした事はないが、人の意見をまとめる仕事はずっと携わっている。
以下そのポイントである。


ー自分の喋りが多いのは頂けない
TV等でのインタビュー番組を見ていて、残念に思うときがある。それはインタビューアーが喋り過ぎている時である。結果、インタビューを受けている人は、相槌を打つだけになっていることがある。
インタビューアーが、前もってその相手のことをよく調べてインタビューするのは当たり前のことであるが、インタビューアーが要点まで喋って相槌を打たせるだけというのはなんとも情けない。見ている方はイライラする。
インタビューを受ける相手が、自分の口でその要点や想いを強く語る、そのお手伝いをしているインタビューアーこそプロフェッショナルと言えるだろう。


ー聞き上手はまとめ上手
インタビューアーは質問上手でなければならない。それには、自分が聞きたい要点をメモにでもまとめておくべきだろう。
インタビューの途中で、思わぬ面白い意見が登場する時もあろう。そんな時は、思い切って方針転換して、深みにはまってみるのもいいだろう。それは一つの決断であり、それが誌面を大きく盛り上げることになるという、自信を持った決断である。インタビュー以外にも、こんな場面には何回も遭遇するだろ。それは自分のディレクター力を試されているときだ。
深みにはまりながらも、軌道を修正し着地点を確保していくのだ。
とにかく、インタビューアーは、インタビューのテーマに沿ってまとめようとするあまり、平板に取り繕うなどしてはならない。しかし相手を破壊してもならない。これまで知られなかった視点での相手の考え方や信念、工夫や努力、失敗などを浮かび上がらせるのだ。しかし、決してインタビューのテーマを外れてはならない。例えば、作家への健康維持についてのインタビューだったとして、健康のテーマを忘れてまとめ上がるなどである。


ーインタビューには意図が働く
インタビューではICレコーダーを使って録音することもあろうが、あまり頼らないことだ。録音をそのまま原稿に起こすなど愚の骨頂だと思う。会議の議事録でも、そのようなまとめ方はしない。
録音はあくまで確認のためであり、取材中はメモを取りながら、大きな方向を見つめながらインタビューをリードして行かねばならない。つまり大きな意思の方向の元に進めて行くことが前提である。しかし、往々にしてそのような意図が崩れるときがある。そのときこそインタビューアーの力の現れるときである。足元の意見の方向だけ見つめていると、一緒に破綻してしまい、まとめようも無くなってしまう。しかし、スクープでもあるかも知れない。
自分の立ち位置で、小さくまとめようとしたり、円満に収めたりしないで、相手の心の中に一緒に飛び込んでしばらく歩いてみても良い。


ブレーンストーミングはインタビューでもある
発想を生み出すためにはブレーンストーミングが重要だとずっと説明している。このブレーンストーミングで発想を拡げていく技術は、このインタビューの技術でもある。今着想されたアイデアを核にして次々にそのアイデアの子供達を生み出すには、上手な問いを発することに尽きるのだ。
一人ブレーンストーミングは、自分に対して問いを発し続けていくのだ。