30.最終回 思考マップその他

私がシステムイベント企画を主業としていたのが約35年前だったでしょうか。その時に編み出して長く使っていたのが、思考マップというものです。簡単に言えば、互いに反対語を組み合わせたX軸とY軸の4象限の平面にキーワードを置き、その軸の言葉で無理やり発想していくと言うマップでした。
反対語の組み合わせは、頭脳と肉体、フィクションとドキュメント、土俗的と国際的、集団と個人、物質的と精神的、伝統的と新機軸、屋外と屋内、都会と田舎、長期的と瞬間的、色気と食い気、真面目と面白、はぐれと本流、感情的と論理的、合体と分解、自動と手動、という反対語の組み合わせです。
例えば、X軸に頭脳と肉体を置き、Y軸に都会と田舎を置いて、そのくくられた象限に思い浮かぶ言葉を置いていくのです。そして、その軸の言葉を次々に変えていくと、また新しいイメージを生むことができます。
PCを使ったバンドを企画した時には、色気と食い気、自動と手動を軸としたマップの中で企画が生まれましたし、人形浄瑠璃の黒子ロボットの企画の時は、伝統的と新機軸、土俗的と国際的の組み合わせのマップの中で発想が浮かびました。
もちろんそのマップさえあれば一発で発想が閃くわけではありません。しかし、余計なことも含めて何らかの言葉や事項は浮かびます。それをその象限に当てはめて配置し、さらに言葉を付け加えていくのです。行き詰まったら軸を変えて新しい面で再び挑戦していきます。その時に、前のマップは横目で睨みながらでもよし、見なくてもよし、考える領域や視野には制限を与えますが、参考になる言葉は制限なしという自由な気持ちで十分です。
思考マップを思いついた時には、当時のAチームメンバーの手で、BASIC言語でソフト化してもらいましたが、イベントの企画を主業としなくなってからは、メモ用紙に手書きでちょい書きする程度で使っています。


ークリエイティブは多数決ではない。主体は自分だ。
ブレーンストーミングの重要性は前に紹介したが、その結論や決断や判断が多数決では情けない。多数決は、あくまで多数意見で丸く収めようというだけのこと。創造的であるためには、票が入らずとも自分の判断だけで主張すべきである。その主張を通すには、自分が主催するブレーンストーミングとするか、リーダーシップで強権を発揮するしかない。


私の経験を話すことにしよう。新しく属した会社で、展示会に出展することになった。過去には、イベントの企画は主業であったので自ら手を上げてリーダーとなった。
ナレーターを使う必要が出たので、ナレーターオーディションを行うことにした。これまでにオーディションは何度も経験していたが、新しく属した会社の担当者達には初めてのことだった。オーディションの結果、誰を採用するかにそれぞれの意見を聞き票をとってみた。自分の考えるナレーターとは全く違う優しくて可憐なナレーターBさんに票が入っていた。
私は、すかさず皆さんの意見はよく分かりました、しかし、皆さんは素人なので今回は勉強です、ナレーターはAさんにさせて頂きます。その判断基準は、華があって周りを惹きつけるからです、と強権を発動してAさんに決定しました。もちろんブーブー言われもしましたり、何かあるんじゃないの、と勘ぐられたりもしましたが、気にもかけません。


クリエイティブな仕事は、障害や異論があっても強引に自分の主張を表明していくことが重要です。調和からは際立ったことは生まれないのです。


ー文章は上手い下手ではない、感動や共感が滲み出ているかである
心なき美文に伝わるものはない。つまり感情のセンサーが高感度であることに尽きる。


続きあり