命  作:西戸 崎(Saito Misaki)

命って不思議だよね。
普段、何処にあるのかないのかわからないけれど とにかく生きているんだもの。
泣いたり笑ったり、怒ったり悔しがったり、惚れたり振られたり。
命って、感情なのかな。
それとも、痛いとか寒いとか、歩けるとか転ぶとか、体のことなのかな。
きっと全部揃っての命なんだろうね。
でも、時々忘れてしまうんだ。命があることを。生きているってことを。
ある時、大きな病気で全身麻酔にかかったんだよね。
ふっと気を失って、6時間後に目が覚めたんだ。
夢なんか全く見なくて、なーんにもなかったんだ。
10分ほど寝たかなって思ったくらいなんだ。
ほんと、なーんにもなかったんだ。
命がないって、こんなことなんだね。


命って不思議だよね。
普段、何処にあるのかないのかわからないけれど、とにかく生きているんだもの。
毎日毎日働いて、ふとしたことに幸せを感じて、青臭い議論を交わして。
楽しいんだよね、それが。苦しいんだよね、これが。
考えてご覧、生きているときは、活きているんだよね。当たり前だけど。
勿体無いね無駄にしちゃ。
でも、いつも忘れているんだ。生きているから、感じているってことを。
麻酔にかかって思ったんだけれど、あのまま戻ってこれなかったら
一瞬の暗闇が、永遠に続くんだなって事を。
なーんにも知覚がないんだよ。誰にも会えないんだよね。夢もないんだから。
それを考えたら、震えるくらいに怖くなってしまったんだ。
いつかは、お迎えが来るんだろうが、それまでには達観できているよね、きっと。
命があってよかったねって思えるよね。きっと。

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