4 前触れ

手術まで1ヶ月もある。しかしその間、家にも戻れない。それは、腸の閉塞により点滴でしか栄養が補給できないからに他ならなかった。つまり根本解決がないままに、手術までの約1ヶ月をカーテン越しの戦友たちと過ごしたのである。根本解決は、開腹手術して腫瘍の状況を見て行われるのである。ある意味、このやるせなさと言うか懈怠感は、時間を建設的にはしてくれないのだった。
6人部屋の戦友たちは、老人が殆どでおよそ見る限りは私より年長者だった。医師や看護師との会話から推測すると、数度目の入院であったり、抗がん剤との調整の相談があったり、身動きが取れなかったり、消灯時間が来れば、そこは寝言や鼾や歯ぎしりが飛び交う戦場に変わるのだ。寝言の飛び交いについては、数日も大部屋で過ごせば難なく寝れるように慣れてしまう。また、胃腸科の病室では、快方への象徴は、腸の動きが活発でガスが出るということである。食事の時間であっても面会の時間であっても、放屁については最優先であり人に気遣いすることなく御免事項である。巨大から可愛いものまで、この合奏は独特の世界である。