7 前触れ

不思議な現象を経験した翌日、回診の折に先生にその内容を報告した。荒唐無稽な話なので、先生も笑いながら、然しながら科学者としての眼で対応してくれた。その痛み止めは、血圧を下げる働きもあり、それが悪さをして夢を見させたのだろう、と。もちろん、不思議な現象は、霊的なものではなく科学的な現象だと思うので、その意見には納得している。
以降、その鎮痛剤ではなく別の処方に変えてくれたが、私は結構不安が高まり、その後の鎮痛剤は所望せず、多少の痛みを我慢した。


この入院期間中、誠に申し訳ないが私の突然の休みに対する仕事の停滞は全く気にならなかった。それは必ず誰かの手により遂行できる事だという思いが強く、また世代交代のいい機会だと納得していた。
そんな事より、私には運命的なこの啓示というか現実をどう捉えれば良いのかが重要な事だった。入院中は、一貫して明るく未来に向けて思考することはできず、どの位の寿命があるのか、どの様な経過を辿るのか、今後も10年というのは一つの節目で、次の10年はあるのかなどのネガティブな思考に囚われ続けていた。
父親の記録をまとめた事も、この事態が起こる前触れであったのかとも思えた。それだけに、記録といまの思いの違いを含めてまとめ直す事が重要な事だと感じている。これを乗り越えれば、私の思考は本来のポジティブなものに転換できるのではないかと考えている。