25.消さない主義

私は余程に必要のある以外、筆記に鉛筆やペンシルを使いません。それは好き嫌いによるものではなく、消さない主義を実践しているからです。最近では、消せるボールペンなども登場しているようですが、消さない主義の私が使うことはありません。よって、消しゴムとも長らく無縁です。


ー痕跡は思考の痕跡でもある
ノートやメモ用紙、あるいは原稿用紙に手書きで書いた内容は、次々に書き足していくわけですが、削除したい内容や修正したい内容があっても、線を引いて消すだけにとどめます。決して塗りつぶしたりはしません。修正を加えるためには、校正記号の引き出し線を使って修正します。
完全に消し去らないと恥ずかしくて、なんて場合も、私は一本線を引くだけで済ませています。それは何度も修正を重ねるうちに、最初の内容に戻ることだってよくあるからなんです。それを見えなくしてしまえば、もう二度と思い出すことができないかも知れません。


ワープロの場合は古いファイルを残しておく
ワープロで打つ資料の場合は、修正を加えた資料はファイル名を修正日付を入れて新しいファイルで取っておきます。
こうすれば大胆に編集した場合でも、元の内容と見返すことが簡単にできます。大胆に編集した場合など、章や節を丸ごと捨て去ってしまうこともあり、一度捨て去った内容は取り返しがつきません。
ワープロでは、校正ツールを使えば修正記録が残りますが、これは好き嫌いであるかも知れませんが、私にとっては思考過程を蘇らせる修正記録のように思えず、手続き書面の作成以外には使いません。
また、修正途中でその日を終える場合など、手をつけている最後のブロックを色変えしておきます。作業の修正は、その赤字の部分から見直していけばよく、発見も早くブロックを色変えしておけば記憶を蘇らせる助走部ともなります。


ー目的の仕事が終わっても資料類は保管しておく
ワープロで資料を作っているような場合は、先に述べたように修正を加える都度新規ファイルとして作っていくので、古いファイルがたくさん残りますが、それを仕事が終了する都度わざわざ整理して最新ファイルだけ残しあとは削除する人も見かけますが、私は決してそれをしません。
ファイルがべらぼうに溜まりはしますが、最近のHDDは巨大です。貴重な思考の痕跡を一仕事終わったからとはいえ、整理という名の下に削除する意味がわかりません。
使ったコピーや手書き原稿やメモ類など一式資料はファイルBOXに仕舞っておきます。あるいは、ワープロなどのデジタルデータが中心であれば、紙の資料はデジタルカメラでパシャパシャ撮り、まとめてその仕事の名前を付けたフォルダーに入れておけばいい。
私達の創造の成果物は貴重なものです。しかし、記念品としてとっておくわけではありません。前にも述べましたように、一つの創造成果でも、視点を変えれば三段活用はできるのです。年を経れば、似た仕事や、考え方を活かせる仕事が必ず来るものなんです。