参ったな  作:西戸 崎(Saito Misaki)

寂しい気持ちのままに 阪急梅田のガード下で 一杯呑んだ後
ふと足を止め 聴き入る ラテンの路上パーフォーマンス音楽
難波野郎は憎いもんだ お金を次々に 入れていく
演奏が余りに 心そそり CDを買ったんだ 
隣にいた ヨットの堀江さん似の おっちゃんがおいらに そっと聞いた 幾らだったと
そしたら おいらは沖縄だけど 金がないから 踊って感謝を捧げよう と言い出した
本当に踊り出したんだ 広場一杯に
沖縄の踊りを ラテンに合わせて
ジーンときてしまった
でも次もあるんだ 
その隣にいた ヤクザなおっちゃんが 腰を降り降り踊り始めたんだ 大きくね
俺は出来なかった 恥ずかしくって
演奏が終わって 2人と握手したんだ 
声をかけずにいられなかったんだ
そしたら なんていったと思う 
金がないから 感謝を込めて踊っただけなんだと
もう今日の一日 最高の幸せだった 
いろんな思いもあったけれど このために人生があったんだ
そう思えて 今日を終えることができて 幸せだった。
参ったな 本当に参ったな 憎いもんだ。


何故に 自分も踊れなかったんだろうという 悔いもある 少しね
だが いいじゃないか できることを出来るようにしていれば
だが 見習いたいもんだね あのおっちゃんを
まとっている 社会という衣を脱いで 自由に踊れる あのおっちゃんを
自分は何に囚われているんだろう 今の自分は
うっすらと湧いた涙は 格好だけか
演奏している ラテン野郎は そんな心に関係なく 薄汚れた衣と別に美しい
おいらの心を 見通しているよう CD買って済ますのかい と
だから 終わってから 2人のおっちゃんに声をかけたんだ
そうしたら 打ちのめされたんだ 金がないから 踊ったんだという言葉に
悔しいけれど いい気持ちになれたね
もっと世界は広いんだ
狭いちまちました 世界に生きているんだな おいらは
その横で 解き放たれて自由な人もいるんだなって
嬉しかったな 羨ましかったな
ちょっとだけ 自信がもてたことがあるんだ
2人のおっちゃんに 声をかけて 握手できたこと
次は呑んでみたいんだが
参ったな 本当に参ったな 憎いもんだ。

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