詩歌

四季     作:西戸 崎(Saito Misaki)

わたしの物語は いつも冬から始まる。 あなたと出会ったのも メリークリスマス。 コンビニで 最後のショートケーキを 譲り合った。 ハグレ者の寂しさが 引き寄せた 夜の磁石。 大きな磁力に 時計が狂い 朝を迎えた。 長い長い冬を 暖めあって 過ごします。 …

横に降る雨     作:西戸 崎(Saito Misaki)

小刻みの振動 心地よい眠り。 すれ違う のぞみの 風圧に眼を覚まし 伸びをする。 いつしか降り始めていた雨 暗い空。 窓には 小さな小さな水玉が 真横に流れていく。 まるでレースをしているように 次々と現れては 消えてゆく。 わたしの 深い想い出のように…

泡     作:西戸 崎(Saito Misaki)

シャワーの泡が 身を包む。 ラベンダーが仄かに香る シャンプーが眼に沁みる。 白かった手足の指が 紅く染まる。 立ち昇る蒸気とともに 心の澱が飛んでいく。 窓に映る 青い空に 翼をつけて飛んでいく。 細やかな 小さな泡が プチプチと弾け わたしの細胞に …

透しレンズ     作:西戸 崎(Saito Misaki)

昨日までは ハッキリ見えていた あなたの気持ち。 けれど きょうは ぼやけて 霞んでいる。 まるで 遠い 遠い 山の向こう。 あなたの心が 何処にあるのか 知りたい わかりたい。 この眼鏡をかければ 見えるのだろうか 透しレンズ。 あなたの瞳の奥の 私の姿。…

陽ざし     作:西戸 崎(Saito Misaki)

いつも 座る席 君の隣。 それは 夏であろうと 陽ざしの窓辺。 暑くても 眩しくても シェードは降ろさない。 暖かい恵みを 身体中で 受止める。 そこにいる 君の愛情のように。 僕らは この陽ざしを浴びて 新しい旅を始める。 どこに行くのか 分からない。 い…

どうして     作:西戸 崎(Saito Misaki)

重く のしかかった 雲 風は 冷たく 手がかじかむ。 どうして いつも こうなんだろう。 人を怒らせ しくじってしまう。 上手く 言葉に 出来ないんだ。 情けなくって 情けなくって 泣けてくる。でも きっとこの雲の上には 明るい太陽が 僕を見つめて 見守って…

のぞみ 望み 臨み

のぞみ 望み 臨み。 夕暮れに走る のぞみ。 新横浜を過ぎる頃から 活気付いて。 駅弁を 開く人。 ビール飲み 顔が赤い人。 議論が 白熱する人。 パソコン打つ人。 のぞみ 望み 臨み。 人生模様 これから始まり これに尽きる。 人生の縮図を運ぶ のぞみが 闇…

刃     作:西戸 崎(Saito Misaki)

恋の刃の 上を歩くとき。 止まっちゃいけない 駆け抜けろ。 右も左も 落ちりゃ 火あぶり。 滑って転べば 我が身が割れる。 恋の刃は 鋭くひかり 目が眩む。 恋の刃を 向けられたとき。 逃げちゃいけない 追っちゃいけない。 右に左に 身をかわし。 滑って転…

いつの日か君     作:西戸 崎(Saito Misaki)

いつの日からか 突然君は 僕の目の前で 光り輝くようになった。 心は フラフラ 地面が揺れる。 思い余って 告白しようか。 いやいや 時間を溜めて たぶらかそうか。 そんな余裕は 夢のよう。 思いつめるは 僕ばかり。 いつもそばに 居たんだけれど 今日の君…

夜に叫ぶ     作:西戸 崎(Saito Misaki)

鰯雲を 茜に染めた 夕焼け。 心は 飛んで 遥かな昔。 何度 夕焼けに 心決めたことだろう。 だがすぐに 夜がやって来る。 暗い夜が 茜に輝いた心を 被い尽くす。 夜に叫ぶ 夜が叫ぶ。 飲んで また飲んで へべれけに酔って。 記憶をなくして 道にへばりつく。 …

兵どもよ     作:西戸 崎(Saito Misaki)

苦しい戦いの日々 いつになれば解き放たれるのか。 兵どもよ 戦いがない 夜になれば 酔いつぶれよう。 故郷を思い 遠く残してきた 家族を思い。 狂った歌と踊りが お前達を 一瞬にでも 楽にしてくれるなら。 俺も 共に狂おう。 さあ 銃を捨て 刃を収め 肩を…

夕焼け紅葉     作:西戸 崎(Saito Misaki)

夕焼け小焼けのメロディーが 風に乗って流れてくる。 今日も静かな一日が 秋の夕暮れに終わる。 西の空は 薄紅に染まり 遠き富士の稜線を浮かび上がらせ。 遥かな想いは 明星と共に空に昇り 一番星となって輝く。 故郷を 想う。 愛する人を 想う。 人はみな …

キラキラ星     作:西戸 崎(Saito Misaki)

静かな 夜だな。 こつこつと 足音だけが響いている。 空を見上げれば 満天の星に ニコリと笑ったお月様。 最後に 夜空を見たのは いつだったけな。 いつも背を曲げて歩いている 大きな荷物を背負って。 俺の心の 広く深い宇宙は 何処に行ったんだろう。 目指…

ライター     作:西戸 崎(Saito Misaki)

いつからだろう この想い。 身を焼くことに なろうとは思わなかった。 睫毛を焼くほど 上がる炎。 そして フッと消え 二度と点かない ライター。 まるで この情念の行き先を 知らせるよう。 そっと 煙草を仕舞い フッとため息をつく。 もう引き返せない 決意…

その日暮らし     作:西戸 崎(Saito Misaki)

一日一日が 振り返ることもできず 飛び去っていく。 笑ったり 泣いたり 怒ったり 悩んだり 悔しがったり。 様々な出来事が パックになって 目の前を通り過ぎてく。 明日になったら また新しい出来事が 宅急便のように届けられる。 こんなことで いいのか。 …

のりしろ     作:西戸 崎(Saito Misaki)

いつも 気持ちが 一杯いっぱいで ごめんね。 少しでも 受止めてあげたいとは 思っているんだけれど。 いつも 気持ちが 一杯いっぱいで ごめんね。 つなぎ止めてあげるだけの 心にゆとりがないんだ。 いつも 気持ちが 一杯いっぱいで ごめんね。 そんなときで…

いま このとき     作:西戸 崎(Saito Misaki)

慌しい一日だった。いま 真夜中の静けさに黄昏ている。 なんだか 痛烈に寂しい気持ちなんだ。 まあ いいじゃないか 君の役割はもう終わりなんだよ。 そんな声が聞こえてくる。 終わりを知ったカラスは 人知れず 朽ち果てる場所を選ぶという。 もう 思い悩む…

私の心 見つけた     作:西戸 崎(Saito Misaki)

ふわふわふわ 雲の上を歩いていた ふわふわふわ ここは何処なんだろう ふわふわふわ 長い間さまよっていた 飛んでいく風船の中に 見つけた やっと見つけた 私の心 薄汚れてはいるけれど 逞しくもなっている ふわふわふわ 今度は放さないぞ もう2度と さあ 心…

いっぺん     作:西戸 崎(Saito Misaki)

ふと旅に出てしまった あのとき 一遍だけでも あなたに会っておけばよかった いまも その切なさを引き摺り 虚しい旅を続けている 電話の声は 無情にも 心つなぐ拠り所 見出せず さよなら と言えただけ いまも その声が呪縛となって 引き返せない ふと旅に出…

刹那     作:西戸 崎(Saito Misaki)

ボールが トントントンと 下ってく 大きく弾んで 何処へ行く どんなに強く弾んでも 坂道 登れはしないけど とにかく トントントンと 下ってく その先 嬉しいことがある その先 愛しい人が待っている だから おいらも追っかけて 長い くねった道を行く この先…

崩れてみんしゃい     作:西戸 崎(Saito Misaki)

そこんとこ つっぱっちゃってる あんただよ あ、ん、た いっちょまえのこと おっしゃってるようだけど あんたのは 屁、理、屈 屁理屈捏ねてっから いま残っているのは猫だけだよ ね、こ ったく 自分ひとりが 正義の味方って喋り方だぜ 一応 みんな一端(いっ…

大きなヤンチャ坊主達(仮題)     作:西戸 崎(Saito Misaki)

きょう この日 南の海に集う 肩組み合って 歌い 熱く語る この日こそが 待ち遠しかった ビッグサンズ 大きなヤンチャ坊主達よ 振り返れば 深い迷いや 震災の試練など 様々な思いが去来する けれど 決して諦めず ひたすらに 挑戦を繰り返し 長い道のりを辿っ…

姫神を聴きながら     作:西戸 崎(Saito Misaki)

静かな夕べ しみじみと 姫神を聴きながら 広き大陸の 山塊と平原を 瞑想し 来た道を振り返り 行く道を 思い巡らす 小さな花々は 緑に彩を添え 白き峰々の 麓を飾る 我が心 蝶と舞い 軽々と 天に迫る このまま 幻想の里に眠り 朝を迎える。 遠くに聞こえる 素…

あなたの瞳     作:西戸 崎(Saito Misaki)

僕はいつも あなたの瞳に 魅せられる 優しいときも 笑っているときも あなたの キラキラと 光を放つ 瞳の魔力に 心射抜かれる そんなとき 過ぎ去った時代の 激しい 恋情を思い出す あの人の目の輝きが 時代を経て 甦る 今夜は 懐かしき思いを巡らせながら 酒…

祈りの光     作:西戸 崎(Saito Misaki)

大きな窓に 生まれたばかりの 朝日が差し込む わたしは 眠れない夜を過ごしながら その荘厳な景色を待っていた 幻のように紅く光りながら ゆるゆると日は昇ってゆく わたしの頬が ポッと紅く染まる まるで赤子のように そうだ いま わたしが生まれたんだ わ…

おとんのお腹 おかんのお腹     作:西戸 崎(Saito Misaki)

旅先の宿での風呂上り 我が身体 鏡に映る 胸の肉は落ち ただお腹だけが 威厳を見せる 長い年月 互いに戦ってきた 同胞よ 俺の気はまだ張っているが 姿形は 歳相応かおとんを亡くして はるかに時間は過ぎたが いまの俺が おとんに勝るのは まだこのふっくら腹…

ありのままに     作:西戸 崎(Saito Misaki)

誰かが言ったな 頭がよければ 知にまける 口が立てば 弁に負ける 文に秀でりゃ 論に負ける 立派な文句じゃないか 俺が言ったんだっけ そんなはずは無いなでも 人生そんなもんさ 気取ることはないさ ありのままに 率直に 生きていけばいいんだ。 誰かが言った…

のぞみD席     作:西戸 崎(Saito Misaki)

あなたの気持ちを確かめるために 西へ向かった いつもと違う D席に座って 霊峰の頂が見えれば 結ばれる そんな賭けをしたんだ 晴れの日を選んだんだが 都会を発てば 霞が空を覆う のぞみは走り 景色は飛んでゆく あまりに心騒がしく 疲れて眠ってしまったよ…

ボサノバに誘われて   作:西戸 崎(Saito Misaki)

ホテルの窓から 柔らかな朝の光が 瞼をくすぐり 目が覚める うーん 幸せの予感が 背伸びする 彩り溢れる 果物と 珈琲の香りが 流れるボサノバで 舞っている 幸せの朝 あなたとの豊かな一日が ほら いま始まる。 点けっぱなしのテレビが ニュースを告げ 耳を…

夢よ連れて行って     作:西戸 崎(Saito Misaki)

あぁ 眠いな 電車の座席に座って コトコト揺られ 瞼が下りてゆく このまま京成電車に羽が生え 成田から 飛び立っていけばいい 行き着くところは 故郷 博多なんてね あぁ 玄界灘が見えてくる あぁ 中洲の灯が見えてくる このまま宵にまぎれて 夢に遊ぼう。 あ…